本件では、依頼者は、申立の数年前に夫婦で解雇された経験があり、解雇後、失業保険が切れた後は、生活費がないという状況の中、やむなく借り入れをしながら生活を支えていたという事案です。また、子どもが生まれると、仕事を辞めるもしくは休まなければならなくなり、お子様が5人いらっしゃった事案で、度々収入源が途絶えた事案です。
依頼者には、免責不許可事由はなく、免責は容易に認められる事案で、本件でも種々の上申書によって、事情説明を細かくすることで、同時廃止手続による破産開始決定後、免責許可が下されました。
本件の場合、免責不許可事由はなかったのですが、何の説明もしなければ、免責不許可事由があると誤解されるおそれがありました。それは、過去に退職金を夫に贈与していたからでした。通常、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他破産財団の価値を不当に減少させる行為をした」場合には、免責不許可事由となります(破産法252条1項1号9。しかし、本件では、贈与の時期は、いまだ支払い不能状態ではなく、明らかに債権者を害する目的がなかったことを詳細に説明することで、免責不許可事由にならないことを上申しました。仮に免責不許可事由と判断されれば、破産管財人が就任する管財事件とされ、裁判所に納める予納金も20万円程度必要になったと思われます。